ペンギンになって考える

イヌに喰われたペンギンの身にもなってみろ

2021-12-01から1ヶ月間の記事一覧

年を越さない者たち

「私、二〇二一年に残るね」 三年間付き合った美智子に、そう言われた。 大晦日の日、俺の部屋で年越し蕎麦を食べている時であった。 「俺と別れたいのか……?」 突然の意志に俺は驚き、小さく聞いた。 「ううん。この一年とても楽しかった。慶ちゃんといれて…

毎日一緒にいたキミへ

毎日一緒にいたキミへ キミと私は、毎日一緒にいた。 毎日だと大袈裟に聞こえるかもしれないが、これは紛れもない事実だ。むしろ、毎日という言葉より四六時中の方が適切かもしれない。 寝るときも一緒だった。キミは、朝が弱いようだ。私が、何回も叫んでい…

人権

真夏日の真昼間。国会議事堂の前で、デモ行進が起きた。 「私たちに人権を!」 そう繰り返し叫びながら、大勢が一方向を向いて歩いている。まるで、なんかの仮装パレードのようだ。拡声器を使っては人権を求め、旗を振っては政府を非難している。 かなりの規…

賞金首

嫌な時代になったものだ。ほとんどの仕事は機械に奪われ、職の選択肢が少なくなった。現金も滅多に使われることなく、目に見えない電子マネーの時代。我々、強盗を生業にしている者からしては、死活問題だった。 SNSも普及し罪を犯せば、すぐに加害者の情報…

バスジャック

動画共有サイトが、一般的になった現代。誰もが、エンターテイナーやジャーナリストになれた。 自分の経験を共有し、上手くいけば対価も貰えるのだ。 自分で作成した動画をサイトに共有する。再生回数を増やすことができれば、その分広告収入が入る。サイト…

デスゲーム

「あなたたちには、今から殺し合いをしていただきます」 ★ 男女六人が、無機質な部屋に閉じ込められていた。ドアが一つ。当然、このドアは開かない。壁はコンクリート剥き出しで、窓はない。 この六人には、共通点があった。 借金だ。 同じ闇金業者からカネ…

のっぺらぼう

「私の顔を見てください……」 男は、肩を叩かれ背後から声を掛けられる。聞き覚えのない声だ。どうしたんだろうか。 男は声の方向へ振り返ると、そこには目も口も鼻もない肌色の平坦な顔があった。 「うわああ!」 男は、目の前の生物が理解できない。頭は完…

疫病

世界中で疫病が流行っていた。世の中は大混乱に陥り、人々は心身共に疲弊していた。 疫病が流行って二年が経つころ、あるベンチャー会社が新薬の開発に成功した。この薬は、疫病に大いに有効であった。 その薬のおかげで、人々は救われた。見えない疫病源と…

財源

十一月の上旬、資産家たちの家に相次いで強盗が入った。銀行を信用しない資産家たちは、金庫を漁られ全額奪われていた。 誰の犯行なのだろうか。刑事の加納は、考えていた。 捜査を進めると、驚くことが判明した。強盗に入られた家は、警察が把握していた件…

記憶忘却装置

「私、あなたのこと知らないので…」 トイレから帰ってきた奈々美は、ずっと様子がおかしかった。俺とレストランで一緒に食事をしていることが、よっぽど怖かったのだろうか。慄いた顔で、急いで出て行ってしまった。 俺は、奈々美にフラれた。一年付き合って…

北風と太陽 ザ リベンジ

『一人のサラリーマンが、一本道を歩いています。 「もう十一月か……寒くなってきたな」 男は買ったばかりの、コートを羽織り次の営業先へと向かいます。 そうすると、ものすごい勢いの北風が、サラリーマンに向かって吹き荒れます。 「うっわっ!!さっむ!…

密室の作り方

「あいつを……殺さなければ……」 道平は、親戚を酷く憎んでいた。父の弟であるその親戚は、家族を破滅と追いやった。血が繋がっているからと言って、父からカネを掠め取り、また無くなれば掠め取る。 そのカネがギャンブルに吸い込まれていると知ったときには…

識別

巨人に支配された世界。 人類は巨人を駆逐すべく、日々奮闘していた。 ある日、生物学の巨匠でもある博士Aが会見を開くという。人類を救うべきテクノロジーが、発表されるとして人々は大きな期待を寄せた。メディアも総動員で、会見に臨んだ。 「我々、〇〇…

鬼の逆襲

なあ、頼むよ。島の皆んなを助けてくれ。 おまえさんのチカラが必要なんだ。 あいつらに復讐したいんだ。おれは…… もう、五年も前の話しだ。あいつらは、突然やってきた。俺たちはさ、こんな見た目をしてるけど、来客を突然襲ったりはしないぜ。 島に来客な…

駐車場の幽霊

我々、都内新聞社心霊班は、ある駐車場への突撃を試みた。女の幽霊が出るらしい。 「先輩、本当に幽霊出るのでしょうか。調べたところ、あの駐車場には何も曰くがありません」 「心配するな!今度は、絶対出る。何百人の読者から、そう投稿があったんだから…

先生、教えてほしいことがあるんだけど

「先生、教えてほしいことがあるんだけど……」 高校三年生の貴子が、そう聞いてきた。 「定期テストはまだ先だろ?随分と真面目なんだな、貴子」 私は、そう答えた。まさか、新卒二年目で高校三年生の担任になるとは…… ただ、現状を嫌うことはなかった。受け…

地球最後の日

「地球最後の日には、なにを食べたい?」 キミは、ボクにそう聞いた。 「ラーメンかな」 って、ボクは答えたんだ。 「日本人らしい答えね。ラーメンの発祥がどこの国だか知らないけど、あんなにラーメンを食べたがるのは日本人しかいないわ」 キミは、ボクに…