深夜のモンスター育成期①
2019年師走初日。
いやもう2日目か。
私は新たな人生を歩もうとしていた。
とはいっても副業だ。
なんせ昼間はいつも通り働かにゃならんのだ。
深夜の副業、それは…
深夜にモンスターを育成。
そのモンスターを戦わせ、ファイトマネーを
稼ごうという計画だ。
私の名前はARU
アルは何処かの国の言葉で赤という意味だった
ような気がする
私はこうして正式にブリーダーに認められたのだ。
ありがとう、おじさん。
名前も知らない人におめでとうと言われることは
何よりも最高なことだ。
ほほう。
どうやらブリーダーには調教助手が派遣されるらしい。
これは助かる。
なにせ副業の身。専門知識など、これっぽちも無いのだから。
よろしく。
おおう、よろしく…
初対面で、よろしく、とは一体…
こんなことばっか言っていたら
今のご時世炎上してしまうかもしれないが
礼儀が成ってないと感じるのは正しいことなのだろうか。
この後が少し不安になる。
信頼してよという言葉は信頼してはいけないよ。
そんな事を私のおばあちゃんが言って気がする。
この子に任せて大丈夫なのだろうか。
とは言え、私にはこの子を拒否する権利など持っていなかったのだ。
そして、この子に言われるまま街に出る。
どうやら街でモンスターを手に入れる事が出来るらしい。
円盤石。
それは私には到底理解の出来ない魔法。
円盤からモンスターが生み出される。
それがこの世界だ。
私が選んだ円盤はこちら。
大黒摩季さんのBEST OF BEST
私が初めて買った円盤だ。
ただまだ中学生だったため、お小遣いを貯めて
BOOKOFFで買った記憶がある。
そんな思い出の円盤。
どんなモンスターが出るのだろうか。
思いを馳せる。楽しみだ。
え、、、
腐ったコンニャク?
到底生き物とは思えない得体の知らない何か。
衝撃だった。
少しがっかりしている自分にがっかりした。
見た目で判断している
私はブリーダーに向いてないのだろうか。
同感だ。
モンスターだから変テコなのかも知れない。
とりあえず、私は大黒摩季さんの曲になぞって
LA・LAと名付けた。
少しでも愛着が湧くように。
いよいよ我がファームにモンスターを連れてくる。
LA・LAには、稼いで貰わなければならない。
未だ愛着が湧かず、ただのお金を稼ぐ道具に
なってしまうのではないのか。
そんな不安があった。
とりあえず、来てもらったからには働いてもらおう。
LA・LAは顔を作り、器用に荷物を運ぶ。
しかし、仕事は失敗。
どうやら途中で投げ出してしまったそうだ。
給料も貰うことなく帰ってきた。
ホリイがすごい嫌らしい顔をして叱るかどうかを
聞いてきた。
こいつ絶対性格悪いだろ。
友だちが学校の先生に怒られてる姿を見て楽しんでたタイプだろ。
そう思うと、私は叱らなかった。
ホリイはそう言って微笑んだ。
きっと内心はがっかりしてるに違いない。
でも、LA・LAにも心があって、
仕事を投げ出したことを反省していたのではないか。
そんなふうに思えたのである。
1ヶ月後には仕事にも慣れていき、
少しずつ稼げるようになってきた。
6月の中旬
ふと日程を見ると今週に大会があるではないか。
よくよくは大会を勝ち進み稼ぎ頭になって
もらわなければと思っていた。
その意味では、この6月にLA・LAの実力を試しておきたいところだ。
そう思い、大会初出場を果たしたのだ。
結果は圧勝だった。
ステータスも申し分ない。十分だ。
圧勝に次ぐ圧勝。
仕事を頑張った甲斐があったじゃないか。
LA・LAは初出場ながら初優勝を果たした。
嬉しそうなLA・LA。
勝利賞金はちっぽけだけど
私は嬉しかった。
大会後、ファームに戻る。
ホリイが嫌な顔で、今度は褒めてあげるかどうか聞いてきた。
こいつの顔、どうにかならんのか。
他人が褒められると嫌なタイプだろ。
日本人は、自分に無害でも他人が幸福になることを嫌がると聞いたことがある。
ホリイは典型的なそのタイプだな。
何がホリイだ。和名にしろ。
ホリイの問いかけにオフコースと答えた。
そして、私はLA・LAに初めておやつを買った。
頑張ったね、LA・LA
そして、調子に乗った私は公式戦に出場することを決めた。
結果は優勝。全勝だった。
LA・LAも嬉しそうだ。
あんなに気持ちを表したLA・LAを初めて見た。
成長を感じた瞬間でもあった。
そして、私はLA・LAのお陰で
初段に認定された。
更に私は調子に乗り、次のランクの大会に
LA・LAを出場されるのだった。
ステータスでは、ほぼ負けている。
だけれどもLA・LAは何とか踏ん張った。
勝ちを取り続け、いよいよ最終戦。
これに勝てば優勝だ。
最終戦。
相手は偽ゴジラの様な風格。
完全に私たちは舐めていた。
惜しくも偽ゴジラの実力に届かず、
惜敗。
LA・LA砕ける。
これがLA・LAにとって初めて味わう敗北だった。
結果は2位。
ホリイは常に右上を向いて言ってるけど、
私はLA・LAを励ましたかった。
だってLA・LAは頑張ったから。
励ますと、こんな感じで…
LA・LAは気合が入ったのかな…
言葉は通じないから分からないけど
LA・LAの言いたいことは分かる気がする
一緒に頑張ろうよ!LA・LA!!
そして、気合を分かち合った私たちは
修行に旅立つことにした。
受付のメガネが話しかけてきやがった。
そしてそんな事を言う。
クソメガネ、LA・LAの悪口を言うな。
てめえもぺっちゃんこにしてやろうか。
クソメガネ、◯ね!
そんなこと、普段は言わないのに言ってしまった。
クソメガネはそう言われると静かになり、
ずっと下を向いていた。
ざまあねえな!
LA・LAは炎天下の中、修行に励んだ。
LA・LAは修行にて新しい技を覚え、
この勢いである。
もうLA・LAは腐ったコンニャクじゃない。
立派な戦闘モンスターさ。
そして、いざ復讐のDランク大会である。
もちろん、この大会には因縁の偽ゴジラも出場している。
LA・LAは何とか勝ち進み、残り2戦。
しかし、ここでハプニングが起こる。
偽ゴジラが負けている…
偽ゴジラを破ったもの。
それはグラニート。
たぶんすごい勢いでニートしているやつだ。
私たちはそう容易に捉えていた。
筋肉モリモリ。いや岩石モリモリだった。
アメコミとかに味方でも敵役でもどっちにでも出れそうなやつだ。
圧倒的実力差。
だけどLA・LAは闘った。
ニートは強かった。
一撃でLA・LAは瀕死になった。
そしてLA・LAは…
負けた…
宿敵偽ゴジラと戦うことも出来ず…
結果は3位だった。
この際賞金などどうでもよかった。
屈辱だった。
不戦勝も圧倒的な敗退も。
そしてLA・LAの身自体も…
LA・LAが入院した。
つづく